その昔、村にお寺を建てることになり、四方から木材を集めた。
竜ヶ窪の池の老木を切る事になったが、思うように倒す事ができず、その老木は池の中にころがりこんだ。
人手をかりて一度は引き上げたのだが、翌日行ってみるとまた元どおりに池の中に入っている。
これは竜神が大木を引き上げるのを惜しんだと、村人は引き上げるのをやめてしまったという。
この竜ヶ窪の池を地元谷地では「谷地の池」と呼んでいる。
池の端には八頭竜王大神の社があり、池の主である竜神としている。
無数の水口から湧き出す冷水は、極暑炎熱の日照続きにも絶えることがなく、谷地の池の水を借りてくれば、必ず雨が降ると言われ、他村から雨乞いに来る姿も一昔にはよくみられた。
ブナ、ミズナラ、ホオノキなどの林を通り抜ける。
竜神の社。
社の下に有るのが1番の湧水口。
池から湧き出る大量の水。
津南町の西方に位置する竜ヶ窪は、河岸段丘上標高450mの所に形成された湧水池である。
池の周囲には、樹林が広がり、ブナ、ミズナラ、ホオノキなど10数種類がうっそうと茂り、30種以上の野鳥がみられる。
池には、県内ではあまり見られないカワマスが生息し、清らかな冷水である事を象徴している。
このような、豊かな自然環境と水質に恵まれている事から、昭和49年に県の自然保全地域に指定され、昭和60年には環境庁より、「全国名水100選」にも選ばれている。
池は南西から北東に長い形をしており、直径220m、短径70m、水深1,5mから2,0m。
池の最奥部にある湧水口からは真夏でも7度という冷水が脈々と湧き出ている。
湧水源はこのほかに、池底、岸辺など10数ヶ所に及ぶ。
全体の湧水量は毎分30t、日量4万3千tとなり、池の水が1日1回入れ替わることになり、池水は清冽な状態に保たれている。