鬼平犯科帳17 【権兵衛酒屋】
駒込の外れに、名前がなく「権兵衛酒屋」と呼ばれている奇妙な居酒屋があった。
店の夫婦は無口で愛想がない。
平蔵がここに立ち寄った日、店が襲われた。
女房は何者かに斬られ、亭主は女房を置き去りにして消えた。
そして、この謎を探りはじめた平蔵にも、怪しい影が近づいてくるのであった…。
それから二刻ほど後になって、どうしたことか、長谷川平蔵が〔権兵衛酒屋〕の裏手の竹藪の中に佇んでいる。
二刻といっても、そのうち半刻は権兵衛酒屋にいて酒をのんでいたのだ。
たしかによい酒であったが、平蔵は亭主にも女房にも、はなしかけたりはしなかった。
「有合わせ一品のみ」の、その一品は蒟蒻であった。
短冊の切った蒟蒻を空炒りにし、油揚げの千切りを加え、豆腐をすりつぶしたもので和えたものが小鉢に盛られ、運ばれてきた。
白胡麻の香りもする。
一箸、口をつけた平蔵が目をあげたとき、奥の板場との境に垂れ下っている紺のれんのところにいた女房と、目と目が合った。
【蒟蒻と油揚げの白和え】
料理:野崎洋光
材料:二人分
蒟蒻(半丁)油揚げ(半枚)木綿豆腐(半丁)酒(50㏄)薄口醤油(15㏄)砂糖(大さじ1)白胡麻(大さじ2)白味噌(大さじ2)
蒟蒻は5分程湯がき、油揚げは湯通しをして油を抜く。
湯がいた蒟蒻は細切りにし、油揚げはさらに細かく刻む。
切った蒟蒻と油揚げは同じ鍋の中へ入れる。
鍋に酒を入れ火にかけ、醤油、砂糖も入れ、下味をつけるため一煮立させる。
木綿豆腐は茹でて裏ごしをする。
白胡麻は擂鉢で摺り、白味噌を加えてさらに摺る。
そこへ豆腐を入れてかき混ぜ、下味を付けた蒟蒻と油揚げを入れ和える。
4:40 2014/06/24