鬼平犯科帳1 【浅草御厩河岸】

 浅草御厩河岸で小さな居酒屋を営む前盗賊岩五郎の元へ老爺がやってきて、ある大盗賊が、最後のか〔お盗め〕をするので手伝ってほしいと持ちかけた。
 しかし岩五郎は、長谷川平蔵の手先となって働いていたので、悩み続けていた…。

 品川へ来た翌年の冬に、折からの雪の中を宿場へ入って来た見すぼらしい旅の老人と、道でばったり出会ったとき、岩五郎はおもわず叫んだ。
 「と、父ちゃんじゃぁねえのか……」まさに、卯三郎である。
 普通ならば、わが子を放り捨て同然にしてしまった父親へ、なつかしげに声をかけるまでもない。
 けれども岩五郎の脳裏には、高岡の町の小さな家で旅から帰ってきた時の父と母の、いかにも仲むつまじい団欒があざやかに、強烈にしみついている。
 また卯三郎も、そのころは、なめしゃぶるようにして、たった一人息子を可愛がったものであった。
 「おれが故郷じゃあね、しんこ泥鰌といって、小ゆびほどの小さい泥鰌がとれる。父ちゃんはこいつを鍋に入れてね、ごぼうをこう細く切って、味噌の汁をつくるのがうめいのさ。大きい鍋にいっぱいこしらえてよ。おっ母と三人でふうふういいながら何杯も汁をすするんだ」
 と、岩五郎が双眸をかがやかせて、お勝に語ったことがある。

【しんこ泥鰌】
料理:野崎洋光
材料:二人分
泥鰌(100g)ごぼう(100g)ねぎ(3本)
水(100㏄)醤油(40㏄)味醂(40㏄)砂糖(大さじ1)薬味(粉山椒、七味・適量)

生きた泥鰌をお湯に浸す、そして直ぐに水に浸けて冷ます。
その泥鰌を洗い、ぬめりを水の中で丁寧にとる。
洗った泥鰌を鍋に入れ強火で煮る。
ごぼうはささがきに切り、ねぎもごぼうと同じ大きさに刻む。
煮えてきた泥鰌はあくを丁寧にとり、醤油、味醂、砂糖を入れる。
土鍋にごぼうちねぎを敷き広げて、その上に煮えた泥鰌を汁ごと入れる。
土鍋を火にかけて煮る。

私感
江戸前の丸ごと泥鰌鍋は苦手で食べる前から嫌いです。
以前書いた私のレシピ、子持ち泥鰌を開いて骨を抜いた柳川鍋しか泥鰌の食べ方を知らない私、けど残念な事に現在生きた泥鰌を捌ける職人が見当たりません。
15年程前は巻町に泥鰌屋が在りそこの親父の見事な泥鰌捌きに見とれたものです。
でも、このしんこ泥鰌に少し手を加えれば、私のも食べれる泥鰌鍋に仕上がるような気がします。

6:16 2014/06/03


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