剣客商売三 陽炎の男 【兎と熊】
町医者・小川宗哲の愛弟子、村岡道歩の娘がさらわれ、娘と引き換えに毒薬を作れと脅された。
秋山小兵衛は敵を欺くため、緻密な策を練る。
医者の見習いに扮した大治郎が村岡の家を守り、四谷の弥七が探りを入れる。
小兵衛の策で、村岡が動き出すのであった…、
そこで、小兵衛と宗哲が密談半刻。
酒ものまずに宗哲は、本所の自宅へ帰って行った。
夜に入って、四谷の御用聞き・弥七が駆けつけて来た。
「すまぬな、弥七。腹ぐあいはどうだ?」「晩飯も食わずに飛んでまいりました」「そうだろうとおもってな、豆茶飯を不二楼の板場へあつらえておいたぞ」「豆茶飯……?」「これ、弥七。女房が武蔵屋という四谷界隈でそれと知られた料理屋をやっているというのに、何も知らぬとは、どうしたことだ。今日はな、おはるの父親が、蚕豆のうまいのを持って来てくれてな。こいつをちょいと炒りつけ、水に浸けて皮をむいたのを茶飯に炊きこむ。これが豆茶飯よ」「へへえ。それは、うまそうでございますね、先生」「いっしょにやろう。やりながら、さて、相談だ。弥七、ちょと、おもしろいことになってきたぞ」と、今度は、おはるに、「おはる。先へ寝なさい。明日は、お前も、いそがしくなるやも知れぬ」小兵衛が、そういった。
そして、この夜。
【豆茶飯】
料理:野崎洋光
材料:二人分
空豆(20個)米(2合)水(300㏄)酒(45㏄)濃口醤油(45㏄)
空豆はさやから出して皮の付いたまま裏表をフライパンで焼く、目安は焦げ目が付くまで。
焦げ目が付いたら氷水で一気に冷やす。
実を崩さぬように丁寧に皮を剥く。
土鍋に米を入れ、水、醤油、酒を入れて炊く。
米が炊き上がる直前に空豆を入れる(八割か九割くらい炊き上がった頃あい)豆は焚き込まない。
5:00 2014/06/22