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 剣客商売六 新妻「金貸し幸右衛門」

 金貸しの老人浅野幸右衛門が狙われ、小兵衛が助けた。
 襲った男藤丸庄八は、小兵衛を慕う渡部甚之介の幼馴染みだった。
 明くる日、藤丸が殺された。
 幸右衛門は、一年四ヶ月程前の或る日、一人娘が女中と共に出掛けたまま、行方不明となっていた。
 
 (そうだ。久しぶりに、元長へ寄ってみようか……)
 [元長]は、小兵衛がひいきにしている橋場の料亭[不二楼]の料理人長次と座敷女中おもとが夫婦になり、浅草駒形堂裏の河岸にひらいている小さな料理屋である。
 両国橋を渡った小兵衛は、ゆっくりと浅草へ向かった。
 元長へ着くと、長次夫婦がよろこんで出迎えた。
 階下は十坪ばかりの入りこみ座敷だが、どこまでも小ぎれいにしてあり、席を区切る衝立障子もしゃれた造りだ。
 客が三組ほど入っていたが、その中で、小兵衛と同年配の老人が默念と盃をなめているのが目についた。
 去年の暮れに来たときも、小兵衛は、この老人を見かけている。
 背丈が高く、腰も曲がっていない、すっきりとした体つきの老人だが太い竹の杖をつき、短刀をたばさみ、店を出て行く姿が印象に残っていた。
 (中略)
 「ふうん。おもしろそうな老人じゃ」「さあ、なんでございますか……」
 いったん、階下へ去ったおもとが、蠣の酢振へ生海苔と微塵生姜をそえたものと、鴨と冬菜の熱々の汁を運んであらわれた。
 このように、体裁にとらわれずに、うまいものが食べられるというので、このごろの元長は、なかなかどうしてよく繁昌しているのである。

【蠣の酢振へ生海苔と微塵生姜をそえたもの】
料理:田村隆
材料:二人分
牡蠣殻つき(12個)生海苔(20g)生姜(適量)信州味噌(5g)水(3カップ)酢(半カップ)

牡蠣を殻から外し酢と水を入れた鍋に牡蠣の身を入れる。
弱火で牡蠣を振り洗いしながら牡蠣に火を通す、軽く火は通ったら牡蠣をざるに上げる。
生海苔を包丁で刻み信州味噌と混ぜ合わせる。
牡蠣を皿に盛り茹で汁をかけ味噌と混ぜた生海苔と微塵生姜をのせる。


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