にっぽん怪盗伝【ねずみの糞】

 昔、掏摸を働いていた小間物屋の又吉は腕っ節の強い女房のおまゆに咎められ、堅気に成って早六年。
 だが遊女のようなことをするおふくに入れ込んでしまった。
 しかも、おまゆとおふくはかつて同じ道場で学んだ友だった。
 おふくが、劍の道に進んだ理由と、その道を外れた理由が語られる……。

 おでん燗酒の屋台主は凍てつく暮れの夜の悦楽。

 又吉が、嶋屋を出たのは五ッ前であったろう。
 大伝馬町から人形町通りをまっすぐに南へ行き、酒井志摩守屋敷にそって、ぐるりとまわると、永久橋がある。
 これを渡って北新堀町を突っきれば、その対岸が又吉の住む深川である。
 「うう、ばかに寒いな」永久橋のたもとまで来て、又吉は身ぶるいをした。
 嶋屋で馳走になった酒の酔いも、すっかりさめてしまい、凍りつくような夜であった。
 橋のたもとに[おでん・かん酒]の屋台店が出ていた。
 「熱いの一本、つけて下さい」又吉は中へとびこんで、いった。
 
 このころのおでんは、現代のわれわれが食べているような煮こみのものではない。
 石をならべて熱した上へ、こんにゃくと豆腐をのせて水分を去り、十分に熱したところへ味噌をつけて出したものである。

 熱い酒で、又吉は豆腐を一つ食べた。
 「もう一本もらいましょうか」又吉が、人のよさそうな屋台店の老爺に、こういったときである。
 ぬっと、のれんをわけて入って来た男が、「おい。おやじ」と、濁声でよんだ。
 がっしりと、見上げるような男で、茶の垢じみた着物に太刀一本を落しざしにした、見るからに荒さみきった五十がらみの浪人者で、したたかに酔っていた。

【おでん】
料理:田村隆
材料:二人分
黒こんにゃく(1枚)焼き豆腐(一丁)信州味噌(200g)卵(1個)砂糖(40g)酒(20㏄)味醂(20㏄)

焼き豆腐は1,5㎝幅に切り、下茹でしたこんにゃくは1㎝幅に切る。
焼き豆腐とこんにゃくは田楽串に刺す。
味噌の中へ砂糖、味醂、酒、卵を入れ練りこむ。
よく練りこんだら火にかけてさらに練りこむ。

石を網に乗せ火にかけて熱する、石が熱くなったら串に刺したこんにゃくと焼き豆腐をのせて熱する。
熱くなった焼き豆腐とこんにゃくに味噌をのせて頂く。

5:32 2014/03/09


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