おとこの秘図(上) 池波正太郎 新潮文庫

 小娘のお玉は、熱い味噌汁と麦飯と瓜の漬物という昼餉の支度をととのえ、板の間へ運んで来てくれた。
 それがまた、権十郎には(えもいわれずに…)うまかったのである。
 味噌汁の実に、小ぶりの茄子を焼きあげて二つ割にしたものが入っているのも、権十郎にはめずらしかったし、そもそも味噌の味が、江戸の屋敷で口にしていたものとはまったくちがっている。
 色も赤味を帯びていて、味も舌にまつわりつくような濃厚さがあった。
 その味噌汁で麦飯を食べたときのうまさというものは、これまでの権十郎の体験にないもので、「腹も空いていたのであろうが…さようさ、飯を七、八杯はたいらげたろう。ついには小娘がこらえかねて笑出す始末で…いや、それにしても、いまもって、あのときの味わいを忘れかねているのだ」と、のちに徳山権十郎は語っている。

【こぶりの茄子の味噌汁】
料理:野崎洋光
材料:二人分
茄子小(4本)わけぎ(1本)蓴菜(大匙2)大葉(4枚)
信州味噌(30g)水(400㏄)煮干し(10本)昆布(5㎝角1枚)

昆布を水に入れる、煮干しの頭内臓を取り除き開く、それも水に入れる。
わけぎを3㎝の大きさに切る、大葉を千切にする。
こぶりの茄子は皮のまま焼く、これあいをみて総ての面を均等に焼く。
身が膨らんできたら冷水に入れる。
丁寧に焦げた茄子の皮を剥く。
煮干しと昆布に入った出汁を鍋に入れ、火にかける。
煮ったたら昆布を取り出す、その昆布を短冊切にして鍋に戻す。
信州味噌30gを入れ、茄子は切らずに丸のまま入れる。
3㎝に切ったわけぎも入れ弱火で1分火にかける。
蓴菜大匙2を入れ、一煮立したら火を止める。

身を崩さぬよう椀に盛り、最後に大葉を乗せる。


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