仕掛け人藤枝梅安「殺しの四人」(講談社文庫)

 ちょうどそのころ……。
 彦次郎は、雉子の宮の梅安宅へ潜入していたのである。
 おせき婆さんが簡単な戸締りをしておくだけだから、切出し一つをつかって台所の戸を外し、彦次郎はわけもなく中へ入った。
 梅安自身から屋内の様子は、くわしくききとっていた。
 (ふうん……梅安さん。しゃれた家に住んでるなあ)八畳に六畳の二間。
 玄関を入って土間。
 廊下もなにもなく、土間と二つの部屋の間に、長四畳の板の間がある。
 彦次郎はこの板の間の天井板を外しておいてから、蝋燭をともし、手にした風呂敷包みをひらいた。
 中には別の包みが入っている。
 これは昨日、藤枝梅安がわたしてよこしたものだ。
 そのほかには脇差が一つ。
 にぎりめしに醤油をつけて焼いたものが五個。
 これは竹の皮に入っている。
 それから、竹でつくった水筒。
 これだけの物を、踏台をつかって天井裏へ運び上げておいてから、彦次郎は梅安のつかっている夜具を引き出し、ねむりに入った。

【焼むすび】
料理:野崎洋光
材料:二人分
米(1合)醤油(適量)味噌(50g)わけぎ(1/4)水(適量)

土鍋でご飯を炊き、ご飯をあけ粗熱をとる。
ご飯が付かないように手に水を浸け握る、焼むすびは普通のおにぎりより固めに握る。
網を火にかけ弱火でじっくりこんがりと焼く。
味噌と刻んだわけぎを混ぜる、水を少しいれ柔らかくする。
むすびに程よく焦げ目が付いた、表面に味噌、醤油をつけて焼く。
さらに焼く、醤油は少ししみ込むように刷毛で塗る。

焼けた醤油と味噌の香り、これが日本の味の極み。


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